【2005年7月12日衆院法務委員会議事録より】
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm


2005年7月12日の法務委員会審議で、民主党議員は鋭い質問を重ね、政府側はなんども答弁不能に陥りました。
残念ながら、松本議員を除く議員は今回の選挙で落選してしまいました。
松本議員も今国会では法務委員でありません。


民主党議員が要求した資料


■辻恵議員が要求したもの
・六百十五の犯罪の中に、越境性から考えられる犯罪がどういう罪種があって、それにつ
いて具体的にどんな事件が起きているんだという統計
【立法事実の確認のため】
(富田政務官が約束)

■松野信夫議員が要求したもの
・国連の第二回アドホック委員会で出した日本政府の方針の正式な翻訳
【「すべての重大犯罪の共謀または予備の諸行為を犯罪化することは、
我が法制度に首尾一貫しない」と主張しているくだり。日本政府の方針を確かめるため必要】
 (富田政務官が答弁、塩崎委員長が約束確認)

■松本大輔議員が要求したもの
・「第七回会合関係」の「2)一月二十四日から二十七日にかけての非公式会合の内容」

【共謀罪の犯罪化を義務づける第三条が合意された会合。条約解釈に必要】
※国連ホームページで公開されているものの和訳を渡された。再提出を要求
 
・「外務省国会開示資料」の「1)第九回会合関係」
【現条約の三条審議経過、交渉状況を知る上で非常に重要な資料であり、
そこから派生した三十四条二項の立案過程を知るために決定的に重要な資料】
※越境性の定義について議論がされている、最も重要な部分が3ページにわたって墨塗りされていた。


民主党議員が確認したこと

■辻恵議員
・共謀罪法案作成にあたって、国連が条約の国内法化に関して
2004年につくった立法ガイドを参照していないことを確認。

■松野信夫議員
・富田政務官らとのやりとりで、「今回の法案は条約に定めている以上のものを盛り込んでいる」ことを確認
  ・条約では目的犯: 法案ではそうでない
  ・条約では政治的、宗教的利益を目的とするものは除外: 法案では除外していない

■津川祥吾議員
・いったん合意した後に、最後にやめると決めても共謀罪は成立することを確認

それぞれの質問から

●は質問、○は答弁答弁者は富田政務官(公明)

■辻恵議員

●【人権保障機能が果たせるような特定がない】
そもそもは国際的な越境的な組織犯罪を防止しようということで出発したのが、
ふたをあければ、六百十五の罪種で越境的な国際犯罪というのは、
その中で実例としては挙げることが余り具体的にはできないような、そういう状況。
つまり、法制審の第一回ではそういう立法事実はないんだと言われるような状況の中で、
国内法化のみが自己目的化されて、結果として国内法化された現物を見れば
共謀罪の方がむしろ原則になるような、そういう規定になっているわけですよ。
 では、それについて、市民の側から見て人権保障機能が果たし得るような特定がなされているかといえば、
特定もなされていないわけじゃないですか。だからこんな大きな問題になっているんですよ。
 だから、そこについて、では、統計的な数字を示してきちっと答えてくださいよ。
きょうでなくていいから。それはお約束いただけますか。

○【統計があれば出す】
・・・では、済みません。こんなペーパーは見たくないんですが、
当局の方で、すべての犯罪について国際的にのみ行われるか否か、にわかに断じがたい、
組織的犯罪集団はあらゆるものに手を出すというふうなペーパーが回ってきましたが、
実際に、暴力的な犯罪集団がこの罪種には手を出さないとかいうことは、これは言えないとは思うんですね。
ただ、先生がおっしゃっているように、では、これまでに具体例があったのかというようなものは、
裁判例なり、法務省の方にもし統計があれば、それはお出ししたいと思います
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■松野信夫議員


●【条約上は目的犯】
それでは、もう一つ、この五条のところがまさに共謀罪の根拠条文になっているから、
しかも、先ほど、これをもとに犯罪が膨らんでいないかどうかということまで聞いているわけですからね。
 では、五条の1の(a)の(i)のところで、金銭的利益やその他物質的利益を得ることに
直接または間接に関連する目的のための重大犯罪、こういう規定がありますので、
本来これはいわゆる目的犯だ、国内法化するに当たっても目的犯として立法化するんだ、こういう理解でよろしいですか。

○【法案では目的犯としていない】
先生御指摘のように、条約の方には確かに目的というふうにされているんですが、
本法案では目的犯というふうな形にはしておりません。

●【条約では、政治的、精神的、宗教的な利益は除外されるか】

それから、この条約のところで、「金銭的利益その他の物質的利益を得ること」を目的とありますので、
物質的利益というふうにありますから、例えば政治的、精神的、宗教的な利益というものは
この条約上は除外されている、こういう理解でよろしいですか。

○【条約上は除外される】
純粋に宗教的なものあるいは政治的なものは除外されるというふうに言えると思います。


●【法案上はどうか】
そうすると、それはこの犯罪の中から除かれるとした場合に、
では、今度の共謀罪の国内法化の本件の法案では、その点はどうなりますか。
つまり、純粋にというから、純粋に政治的、宗教的、精神的な目的というようなものについては
犯罪としてどう扱うんですかという質問です。

○【法案上は除外されない】
条約の方には目的がございますけれども、本法案では目的がかかっておりませんので、
ほかの要件を満たせば共謀に当たるというふうになると思います。

●【条約を拡大している】
そうすると、これまた条約を拡大しているということになりますね。
つまり、条約では、精神的なものあるいは宗教的なものを目的とするのは、これはもう除外されるんですよ。
ところが、今の富田政務官の答弁だとそういうのも国内法では入ってくるということですから、
これまた条約を拡大しているということで、そういうふうな理解でよろしいですね

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■松本大輔議員

●【資料の重要部分に墨塗りされた】
まず、この資料一の「1 情報公開文書」「第七回会合関係」の
「2)一月二十四日から二十七日にかけての非公式会合の内容」ということなんですが、
これは先ほど松野委員も取り上げられておりましたが、条約の現五条、この当時の三条、
共謀罪の犯罪化を義務づける第三条が合意された第七回の経過を明らかにすべきではないか、
これは決定的に重要ではないかという趣旨で御質問をさせていただいているわけです。
それについての外務省の回答は、具体的に公電をちょっと御紹介させていただきますと、
ちょっと戻りますが、資料三、この黒塗りの公電が、共謀罪の犯罪化を義務づける
第三条が合意された第七回の会合内容を、非公式会合をつづったものではないかな、
そこで墨塗りされていると。
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■津川祥吾議員

●【実は相当幅広い】
逆に、六百十四、今御説明いただいた数字でいうと六百十五の犯罪数もあって、
今、一個ふえたのが何かもわからないというようなほどたくさんあるわけですね。
国民の多くの方はもっとわからないと思います、専門家の政務官ですらわからないんですから。
そういう状況で、非常に多くの、言ってみれば新しい犯罪類型ができたというふうに考えてもいいと思います。
 これまでは、少なくとも、共謀している段階でやろうという話になっても、
まあ、やめるかという話になればそれっきりなわけですから。
ただ共謀しただけで犯罪になります、何を共謀したら犯罪になるか、どれですかといったら、
六百十五ありますというのでは、国民はよくわからないわけですね。
やはりこれは、ある意味で、逆に不安になるんだと思います。
 私たちは別に、常に法律を違反するようなことをやっているという意識はないですから、
まあ、どこかの犯罪者が何かやっているんだろうぐらいの感覚でいれば
関係ないよというふうにお感じの方もあるかもしれませんが、
一方で、六百十五もあると、実は相当幅広いということもあります

●【5年以下の犯罪を対象にしたらどうか】
先日、我が党の委員会の勉強会に法務省の方に来ていただいて、外務省の方も来ていただいて、
ここの、長さの部分について留保をかけている国はないんじゃないだろうか、
ないと認識していますというような答弁をいただいたんですが、
これはホームページの方でしょうかね、に書いてあるのは、ウクライナで五年とされている。
これは質問通告の文書にも書かせていただいたので、チェックをしていただいたことと思いますが、
やはりこういうものもないわけじゃないわけです。
・・・私は、五年以下を切るというのは非常に合理的だと、これは私の個人的な思いですが、いかがですか。

○【政治家としては共感できるが・・】
政治家としては共感できる部分はあるんですけれども、
答弁としては、やはり条約上、四年の義務が課されていますので、
中心的な部分に留保をつけるのはちょっと難しいのではないかなというふうに思います。

●【いったん合意して、最後の段階でやめようとしたらどうなるか】

ちょっと済みません、それで話し合いをして、最後の共謀の段階でこれはやめようという話をしたらどうなるんですか。
共謀罪は成立するんですか。

○【共謀罪は成立する】
それは、一たん共謀が成立していれば成立することになります。