【2005年7月12日衆院法務委員会議事録より】
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000416220050712026.htm

2005年7月12日、共謀罪を含む法案の審議が行われました。
第162回国会では、法案の実質審議はこの1日だけでした。
与野党議員双方から法案への疑問が噴出し、議事は何度も止まりました。
以下は、与党委員の質問から抜粋したものです。(発言順)


■田村 憲久議員(自民)

●【法案がわかりづらい】
・三十四条の2の「別段の定め」がわかりづらい。
・団体の活動として犯罪行為を行うという要件を満たす場合は、
この要件を満たす団体というのはどういう団体なのか。
わかりづらい。


■早川 忠孝議員(自民党)

●【重大な変更。特に慎重な審議を】
・我が国の刑事法制に重大な変更をもたらすものであって、
その運用いかんによっては国民の生活に甚大な被害をもたらしかねない内容も
あわせ持っているのではないか、特に慎重な審議が必要

●【恣意的な運用があってはならない】
・法律というのは、一たん成立してしまうとどうしてもひとり歩きをしてしまう、
また、その法律の運用者の解釈いかんによってその幅が広がったり縮まったりしてしまう、
こういう恣意的な、不安定な運用があっては決してならないと私は考えております。
 
●【だれもが同じ解釈にたどり着けるか疑問】
・本当にだれでも同じ解釈にたどり着くようなそういう法文になっているか、
まだ疑念が残っているように思います。
そういう意味では、なお検討が必要なのではないかと思います。

●【条約の範囲を逸脱していないか】
・共謀罪の規定は、条約が求める範囲を逸脱しているのではないか。
条約で言う重大な犯罪というものと我が国が法定刑で長期四年以上と定めている犯罪、
どうも重なり合っていない部分があるのではないか。

●【市民団体や労働組合の活動が阻害されるのでは】
・市民団体や労働組合等の正当な団体の活動が、
この法律による共謀罪の対象とされては絶対にならないと私は考えております。
しかしながら、この法律の要件そのものを考えると、
どうもこの組織性の要件の中の団体に市民団体や労働組合等の団体が一応該当するのではないか、
そのことによって正当な団体の活動が阻害されるのではないかという指摘があるところであります。

●【正当な弁護活動が萎縮しないか】
・証人等買収罪を創設しますと、刑事事件の弁護人が証人予定者と喫茶店で
打ち合わせをして飲食代金を支払った、
それだけで処罰されるということになりますと、これは弁護活動を明らかに萎縮させてしまうことになります。
万一弁護人の正当な弁護活動が警察当局の監視下に置かれてしまう、
あるいは被疑者や被告人の防御権が不当に侵害されてしまう、
あるいは弁護士の正当な職務行為が制限されてしまうということは、
決してあってはならないというふうに考えております。

■漆原 良夫議員(公明)

●【裁判官の恣意に流れないか】
・共謀罪の成立には犯罪実行の意思の合意があれば十分だ、実行行為を必要としない。
この合意の意思というのは、今局長がおっしゃった具体性、特定性、現実性を持った
犯罪実行の意思の連絡ということになるわけでございますけれども、
その意思の連絡、合意があれば十分であって、実行行為は要らないわけですから、
外形的、客観的事実は不要ということは、犯罪の立証そのものができにくいのではないのかなと。
あるいは、立証が場合によっては裁判官の恣意的に流れることになりやしないかなという
危惧を持っておるんですが、この点はいかがでしょうか。

●【犯罪の成立には実行行為が必要】
・犯罪の成立には犯罪実行の意思と犯罪の実行行為が必要だというのが刑法の原則だと思うんですね。
いわゆる共謀共同正犯でも、共同実行の意思と共同実行の行為が必要だというふうに解釈されています。
刑法の理論では、客観説と主観説、大きな対立がありますが、
いずれの立場に立っても、犯罪の成立には単なる意思だけではなくて
何らかの外形的事実が必要だ、こういうふうに解釈されております。

●【原則か例外か】
・現行の共謀罪も新しい共謀罪も、現行法体系においては、今局長るる述べられました、
その必要性からくる例外的なものなんだというふうに私は理解しておるんですが、この点はいかがでしょうか。
・我が刑法の法体系からいったら例外の部分に属するのか原則の部分に属するのかと。

(「原則と例外と言われると、なかなか私どもも断じがたい」との答弁)
・言外に例外だとおっしゃっているんだなと。

●【目に見える犯罪の準備行為を要求すべき】
・心だけでは処罰しないよ、何らかの行為があって処罰するんだよという我が国の刑法理論が原則とすれば、
オーバートアクトを要求することの方が我が国の刑法理論に合うのではないかなと私は思っているんです。
*オーバートアクト=目に見える行為

●【対象を組織犯罪集団に明確に限定せよ】
・この法律の「団体」には、犯罪性のない株式会社、市民団体、サークル、労働組合などの
組織犯罪集団でないものも含まれる、こう解釈されていますよね。
したがって、そもそもこの法律は組織犯罪集団を対象としたものではないんだ、
だから、何らかの団体構成メンバーによる組織的な犯罪を広く処罰の対象として
いるのではないかという強い懸念が指摘されているわけですよね。
 そういう意味では、私は、この懸念を払拭するために、共謀罪は組織犯罪集団の行う行為に
限定されているんだということを明確にしたらどうでしょう。
あるいは、もう条文を明確に、だれが見てもわかるように直したらどうでしょうか。
いかがでしょう。

●【なぜ国際性がいらないのか】
・この条約は、大臣の趣旨説明にもありました国際的な組織犯罪防止という目的なわけですよね。
また、犯罪が国境を越えてグローバル化しているという大臣のお話もあったとおりであります。
 そういうことから考えると、何で国際性が要らなくなるのかなという。
もともと、国際犯罪の防止、犯罪のグローバル化、国境を越えた犯罪が多発しているから
それを規制の対象とするんだというふうにいいながら、実際は国際性は要らないよというと、
ある意味では、国際性という必要性から出発したものが、
国際性といいながらも適用対象は広い国内犯罪だけになってしまうじゃないかという。
だから、悪く解釈すれば、国際性の名前をかりて、国内の処罰対象を、本来例外でできない共謀罪というのを
つくってうんと広げたにすぎないんじゃないか、こういう非難もあるわけですよね。


■吉野 正芳議員(自民)

●【濫用のおそれをぬぐい去れない】
・私も、共謀罪、いろいろ勉強してまいりましたけれども、一つだけやはり心配があります。
これは、長期四年の重大犯罪は全部処罰の対象にするという、
ある意味で対象が広くなっているわけなんですけれども、これが捜査機関に濫用されるのではないかというその心配が、
今のところ、私が勉強した範囲ではぬぐい去ることができません。