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刑法の原則:「思想ではなく行為を罰する」


一般に、犯罪は、次のようなプロセスをたどって行われます。

単独 共同
(1)犯罪を犯したいと思う (1)犯罪を行うか相談する
(2)犯罪の実行を決意する (2)犯罪の実行を合意する
(3)犯罪の準備をはじめる (3)犯罪の準備をはじめる
(4)犯罪の準備を完了する (4)犯罪の準備を完了する
(5)犯罪行為の実行に着手する (5)犯罪行為の実行に着手する
(6)結果(被害)を発生させる (6)結果(被害)を発生させる

 日本の刑法では、(6)の「犯罪を実行し、結果を発生」させた段階ではじめて処罰する のが原則です。

 「思想ではなく行為を罰する」という大原則があるからです。他人の自転車をパンクさせたくて釘をさそうとしたけれども友人に止められてやめた、という場合は処罰されません。

 ただ、重大な犯罪では、(5)から(6)への段階の、「犯罪行為の実行に着手したけれども結果が発生しなかった」段階(未遂)で処罰することもあります。これは例外です。犯罪行為の実行に着手しても、自分の意思で中止した場合は、刑が半分になったり免除されたりします。

 そして、ごく例外的に、特に重大な結果の発生する犯罪では、(4)の「犯罪の準備を整えた段階(予備)」で処罰することがあります。これは、殺人罪、強盗罪、放火罪、略取誘拐罪など、数えるほどしかありません。

 個人の場合、(2)の「犯罪を決意」しただけの段階で罰せられることはありません。

 複数のひとが共同で犯罪を行う場合でも、(2)の段階(共謀)で罰せられるものは、ほんとうにわずかしかありません。これは、例外の例外の例外です。内乱陰謀罪、私戦陰謀罪、防衛秘密漏せつ等共謀罪などです。

 ところが、今回あらたに設けられようとしている「共謀罪」は、600を超える犯罪に対して、(2)の「犯罪を合意した」段階で処罰しようというものです。

 「合意」の認定がむずかしいので、運用上は(1)の「相談」しただけで処罰することになるのではと心配されています。対象犯罪リストの中には、未遂の段階まできても罰せられないような罪も数多く含まれます。

 共謀罪の新設が「思想ではなく行為を罰する」という刑法の原則を根本から崩すものだと強く批判されるのは、そのためです。





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