Q5 共謀罪が設けられると,通信や室内会話の盗聴,スパイによる情報取得などの捜査権限が拡大され,
国民生活が広く監視される社会になってしまうのではないですか。
(法務省の答え)
「組織的な犯罪の共謀罪」には,厳格な要件が付され,例えば,暴力団による組織的な殺傷事犯,悪徳商法のような組織的詐欺事犯,暴力団の縄張り獲得のための暴力事犯の共謀等,組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の共謀行為に限り処罰することとされていますので,国民の一般的な社会生活上の行為が本罪に当たることはあり得ません。
また,組織的な犯罪の共謀罪の新設に際して,新たな捜査手段を導入するものではありません。したがって,他の犯罪と同様に,法令により許容された範囲内で捜査を尽くして適正な処罰を実現することで,国民の生命,身体,財産を組織犯罪から保護することとなります。
(私たちの疑問点)
【厳格な要件?】
「暴力団による組織的な殺傷事犯,悪徳商法のような組織的詐欺事犯,暴力団の縄張り獲得のための暴力事犯の共謀等,組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の共謀行
為に限り処罰する」という説明を政府は繰り返していますが、そのような限定が明確に読みとれる言葉は、条文にありません。
法律はできた当初は立法意図がある程度考慮されますが、ときとともに、条文に書かれた言葉が一人歩きするようになります。ですから、政府がいくら「このようなつもりです」と説明しようと、条文上に限定がなければその危険性は計り知れません。
要件が曖昧だと濫用に道を開く、というのは歴史が何度も教えてくれたことではないでしょうか。
【捜査手段】
「共謀」罪を立証するためには、「共謀」を行った証拠が必要です。
まだ犯罪行為を行っていないのですから、その証拠は、会話や通信の記録です。
そうした証拠を集めようとすれば、会合に潜入して録音したり、盗聴したりせざるを得ないでしょう。
ですから、共謀罪が新設されれば、次は、捜査手段に関する法令の枠が広げられて、盗聴やおとり捜査、一種のスパイ行為なども認められるようになるおそれが大きいといえます。
【法令により許容された範囲内で捜査?】
共謀罪法が成立した場合、今までの犯罪とは違って、まさにこの「法令に許容された範囲」が限りなく広がってしまうおそれが多くの法律関係者から指摘されています。
それほど、法律の条文には曖昧な部分が多く残されています。これでは多くの判断が捜査当局の恣意的な裁量に任されてしまいます。