Q4 共謀罪は、たくさんの罪を対象としていますが、もっと限定できないのですか。
(法務省の答え)
「組織的な犯罪の共謀罪」は,組織的に行われる「死刑又は無期若しくは長期4年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪」の共謀を処罰の対象としています。
これは,国際組織犯罪防止条約が,重大な犯罪,すなわち,「長期4年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重い刑を科することができる犯罪」を共謀罪の対象犯罪とすることを義務付けているからです。
したがって,共謀罪の対象犯罪を更に限定することは,条約上できません。
もっとも,「組織的な犯罪の共謀罪」は,組織性の要件を満たす重大な犯罪に限り,共謀罪の対象とすることとしていますので,逮捕・監禁罪や詐欺罪を例にすると,これらは重大な犯罪には当たりますが,逮捕・監禁や詐欺を共謀した場合のすべてについて共謀罪が成立するわけではなく,例えば,
○ 暴力団幹部らが,対立抗争中の暴力団の組長の居場所を聞き出すため,配下の組員を使って,出入りしている飲食店の従業員を逮捕・監禁することを共謀した場合
○ いわゆる「振り込め詐欺」のように,詐欺会社の幹部らが,部下を使って,電話をかけて嘘を告げる者,その際本人になりすまして信用させる者,口座に振り込ませた金を引き出す者等の役割分担を決めた上,示談金名下に金員を振り込ませて詐取することを共謀した場合
など,「団体の活動として,犯罪行為を実行するための組織により行われる」等の厳格な組織性の要件を満たす逮捕・監禁や詐欺の共謀に限って,共謀罪が成立するのです。
(私たちの疑問点)
法律の体系は国によって大きく異なります。アメリカやヨーロッパでは刑罰の幅が細分化されているため、刑の上限が4年以上といえば、かなり重い犯罪に限定されるのだそうですが、日本の刑法は、法定刑の幅が広いのが特徴なので、重大な犯罪とまではいえないものまで入ってしまいます。たとえば窃盗罪の刑罰は10年以下の懲役です。10億円の泥棒だけでなく、万引きも置引もここに入ってしまいます。こんな犯罪まで対象とすることを条約は想定していないでしょう。
条約は、立法にあたって各国の国内法の原則にしたがうことを認めています(第34条1項)。ですから、国内法の原則に矛盾するような規定については、留保をしたり、独自の解釈を行うことができます。
国会でも、「条約の趣旨及び目的を損なわない限度で、条約に対し留保を付すことは可能」という答弁が行われています(2005年10月21日 平岡秀夫議員の質問に対する答弁)。なぜ政府は留保を行おうとしないのでしょうか。
また、ここでは、「厳格な組織性の要件を満たすものに限って共謀罪が成立する」と説明し、暴力団と詐欺会社のような組織犯罪集団による悪質な犯罪の例を挙げていますが、法案には、組織犯罪集団に限定するということは書かれていません。政府自身、官庁も対象となりうることを認めています。