Q2 組織的な犯罪の共謀罪の新設によって,何か良いことがあるのですか。
(法務省の答え)
「組織的な犯罪の共謀罪」の新設によって,国際組織犯罪防止条約を締結することが可能となり,一層強化された国際協力の下で,我が国を国際的な組織犯罪から守ることができるようになります。具体的には,外国から共謀罪について捜査共助や犯罪人引渡しの要請があった場合に,法案の共謀罪を新設すれば,外国からの要請に応じて捜査共助や犯罪人引渡しを行い,国際社会と協力して国際的な組織犯罪の防止に取り組むことができるようになります。
また,法案の共謀罪を新設することにより,例えば,暴力団による組織的な殺傷事犯や,いわゆる振り込め詐欺のような組織的な詐欺事犯などについてその実行に着手する前の段階での検挙・処罰が可能となり被害の発生を未然に防止できるなど,組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪から国民をより良く守ることができるようになります。
(私たちの疑問点)
いま国会で審議中の「共謀罪」には、条約にある「組織的な犯罪集団が関与する」という限定も、「国境を越える犯罪」という限定も、「金銭的利益その他の物質的利益を得るため」という限定もありません。
法務省によれば、600以上の犯罪が共謀罪の対象となります。
あまりに多くて覚えきれません。それに、発表するたびに対象となる犯罪の数が増えています。これでは、だれがなにをしたら共謀罪で処罰されるのか、わかりません。
「共謀罪」は、「組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪から国民をより良く守る」どころか、多くの国民を、「いつ自分も検挙・処罰されるかわからない」という恐怖におとしいれるものにならないでしょうか。
さらに、自首した場合は刑が減免される(半分になったり免除になったりする)規定が密告の奨励につながるのではないかというおそれもあります。
外国から共謀罪について要請があったら、それに応じて捜査共助や犯罪人引渡しを行うことができると法務省はいっています。
しかし、まだ何の行為もしていないのに、外国の捜査機関から「共謀があった」といわれただけで捜査共助や犯罪人引渡しを行うのはあまりに危険ではないでしょうか。他国で冤罪が起こるのを手助けする「冤罪共助」にならないとだれが保証できるのでしょうか。
また、「国際犯罪防止のため」「国際協力のため」にと「国際性」を繰り返し強調しながら、二言目には国際性とは関係のない組織犯罪の話を持ち出すのは、筋の通らない説明です。
しかも、法案では、対象を組織的犯罪集団に限っていません。これでは、暴力団の凶悪な犯罪を事前に防ぐためといっておいて、真の目的は別にあるのではという不安をぬぐえません。
「暴力団による組織的な殺傷事犯」については、現在も予備の段階で処罰可能です。犯罪を未然に防ぐという意味では、それで十分でしょう。振り込め詐欺については、やろうと合意しただけの段階で処罰するのはいきすぎではないでしょうか。