Q1 なぜ,今,組織的な犯罪の共謀罪を新設するのですか。
(法務省の答え)
国際組織犯罪防止条約は,一層効果的に国際的な組織犯罪を防止し,これと戦うための協力を促進することを目的とする国連条約であり,平成15年9月に発効しています(注)。この条約については,同年5月にその締結について国会の承認を得ており,我が国としても,早期に締結することが重要です。
この条約は,締約国に対し,重大な犯罪の共謀等を犯罪とすることを義務付けていますが,これは,組織的な犯罪は,計画や準備段階に関与する者が多く存する一方で,計画性が高度であり,組織の指揮命令等に基づいて行われることから,犯罪の実行に至る可能性が高く,また,ひとたび犯罪が実行されると,重大な結果や莫大な不正な利益が生ずることから,これに効果的に対処するためには,犯罪の実行に着手する前の段階の段階の一定の行為を処罰の対象とすることが不可欠であると考えられたからです。
そこで,我が国も,国際社会の一員としてこの条約を早期に締結し,国際社会と協力して,一層効果的に国際的な組織犯罪を防止するため,この条約が義務付けるところに従い,「組織的な犯罪の共謀罪」を新設する必要があります。
(注)平成18年1月の時点で,116か国が締結しています。
(私たちの疑問点)
この条約は、国境を越える組織的な犯罪を防ぐための条約です。
対象となる犯罪は、金銭的利益その他の物質的利益を得ることを目的としたものに限定されるほか、条約にはいくつかの限定条件がついています。
しかし、いま国会で審議中の「共謀罪」法案は、それらの限定条件をはずしたり、ゆるめたり、曖昧にしたりして、条約の枠を大きくはみ出しています。
そして、「行為を罰して思想を罰しない」という日本の刑法制度の原則を根底からひっくりかえしかねないものとなっています。
じつは、条約交渉の場では、日本政府は当初「すべての重大犯罪の共謀と準備行為を犯罪とする ことは、わが国の法制度の原則と相容れない」と主張していました。
条約は、各国の国内法の基本原則を尊重すると述べています。国によって法体系が大きく異なるからです。ですから、わが国の法の基本原則を大きく崩すような法改正をする必要はありません。すでに条約を批准した他の国々にも、国内法の基本原則を崩すような法改正をしている国は見当たりません。